2009/08/01

記憶と妄想の狭間

先週、あるシーンを撮り終えた後のこと。

突然、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番が
響き始めました。
もの凄い音響、目眩くモスクワの夏。
役の妄想が引き起こしたんだろうけど、
何のこっちゃ。

チャイコフスキーが響くと胸が裂けそうになる。
広大な土地からに吹く風が
歴史の血と苦悩に塗られた宮殿を撫でていく。
かつて私は男で、草の香りがする髪の男に育てられた。
琥珀色の眼差し。深い碧色のビロードの上着。
プラハへの長い旅路。

「オルフェウスの窓」の読み過ぎみたいな情景は
妄想と言うより、記憶の断片。
どうして日本に再び生まれたんだろう。
今生の前は、江戸で梅を仰いでいたはず。
数え切れない人生の目的は、
絞り込めば、たった一つになるのかな。

8月が始まりました。