2019/05/16

満月


ある夜、おもちゃの望遠鏡を覗き込むと、いつも見上げているものとはまったく違う表情の月がいた。誰かがこの世のフィナーレに大盤振る舞いで用意してくれたもののように神々しいものだった。
長い間見惚れていると、望遠鏡のレンズや頼りない三脚がにゃらにゃらと動いて私の顔を侵食し始めたと思ったが最後、私はおもちゃの望遠鏡に姿を変えていた。

今夜も月の周りを公転しながら、満ち満ちたそれに魅せられている。