人との適切な距離感を取るのっていつも難しい。自分にとっての適切は相手にとってはそうでないことがほとんどだから。関係性や時と場合による要素に、個人の経験則をフル稼働させても太刀打ちできない世相がそこに影響することを深田晃司監督映画『よこがお』は見せてくれる。
少し角度を変えるだけで別人のように見える筒井真理子さんやシーン毎に年齢が違うようにも見える市川実日子さんのように役の多面性を打ち出す俳優陣の演技と映像、パーソナルな心理を巧みに交差させた脚本、衣装、ヘアメイク、ロケーション、介護ステーションの現場感、仕上げた編集に感嘆。
右往左往する周囲の中で唯一、自分の在り方で周りとの距離感を守る米田役・ 池松壮亮さんの俳優としての役の行動チョイス(恐らく脚本に書かれていない)や、病床にありながらも最も太く生きる力を見せてくれた塔子役の大方斐紗子さんの演技にも惹かれました。
作品の衝撃で茫然自失になった状態へ有難〜い仕切り直しを戴いたものの、揺さぶられた感覚は続き、帰りの電車で数駅乗り過ごす。大きな河の橋を歩くことで何かが余計に募ってしまいそうで、外郎売やらチェーホフの台詞やらを月夜に向けて独り言つ。
#よこがお
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