2011/10/29

覆水ボボンガ盆



どうしてもその役に、その感情がほしくて、密閉したその瓶を開けた。

静かに瓶の中に佇んでいたそれの、目で見えないものを感じた途端、それはどろどろと瓶から溢れ出し、足元から徐々にわたしを覆いはじめた。

抵抗しても、鼻から口から目元から体内に入り込むそれは、わたしを侵食した。
六感を冴えさせ、乱心させた。

その役を演じ終えて、再度それを体内から一掃しようと思って途方に暮れた。

何ヶ月かかって何本の涙壺を使ったか、もう忘れた?


はぁー。
もう、野となれ山となれ。
これでいいのだ、ボンボンバカボンなのだ。

2 comments:

老剣士 said...

私が学んだアクターズクリニックの主宰の塩屋さんが、アメリカで学んできた技法のひとつが、演じた役のクリーニングだと聞きました。東京校は短期カリキュラムでそういうこともしているらしい。大阪校は1年間ビッタシでこういう授業はないのですが。

久藤今日子 Qyoko Kudo said...

老剣士さん、
コメントをありがとうございます。「役のクリーニング」、次に切り替えるためと、役者の心の健康のために大切なことですね。調べてみます!
一方、何かの匂いを嗅いだり、触れたり、聞いたりした時に、過去に演じた役の感情が舞い戻るようなことはありませんか?普段の自分には持ち得ない感情は、別の役作りの材料にもなったりするので、引き出しに収納できる「役のクリーニング」があればいいなあと思います。